獅子裁乱れ歌番外編「七夕の日の獅子裁町」


今日は7月7日、皆大好き……なのかは知らないけれどとにかく有名であろう『七夕の日』だ。
七夕といえばもちろんあれだ。キンキンに冷えたそうめんを流す流しそうめんがメインとなる日だ。……まぁ、ではなく。
短冊と呼ばれる長方形の紙に願い事を書いて笹にくくりつけ、天にいるとされる織姫と彦星に向けて思い切りその笹を投げて、見事命中したら書いた願い事が成就されるというものだ。
因みに届かずに地に落ちてしまった場合はその願い事は絶対叶わない。途中で引っかかったり、そもそも投げずに立てかけておくと30〜50%の確立で叶うとされている。
それもあってか投げる人なんてのは皆無に等しい。しかしその中に私は含まれていたりする。
「ねぇ香奈、今年も狙うの?七夕」
楽しそうに真美が聞いてきた。
「もちろん。今回こそは当てるわ」
「……」
「なんで真美そんな微妙な、変な物を見るような顔を?」
「香奈が女言葉喋ったら」
「言うなぁ!!」
鉄拳炸裂!
だが真美は軽やかな動きでそれを回避した。
「ちっ……」
「ふっ……」
僅かの間微妙な空気が流れる。
「危ないよ香奈、そんな武器振り回して。私じゃなかったら死んでたよ」
相変わらず真美には私の拳が通らない。
「はぁ……」
「お前等、とっとと帰れ。下校時間はとっくに過ぎてるぞ」
突然現れて先生みたいな口ぶりでそう言ったのは誰でもない。
「げっ、朽木麟!」「朽木くん!」
「何であんたがここに?」
「なんでとは随分だな。俺様の役職を忘れたのか?まさかそこまで馬鹿だったとは」
相も変わらずこの男は嫌みったらしくいいやがるなー。
「馬鹿ですみませんね生徒会長様!真美帰ろう」
私はお返しに嫌みったらしく言った。
「あ、うん。じゃ失礼します」
「ふん。お前等騒ぎなんて起こすんじゃないぞ!」
「そんなもん起こしませんよ!」

時刻は夜の8時。辺りも暗くなり空には一杯に散らばった星。そして空に流れる川、天の川の姿も見える。正に絶好の投擲日和だ。
手に持った笹にはすでに願い事を書いた短冊が一枚だけ飾られている。
「よし、準備OK。真美10カウントお願い」
「いいよー」
「10!」
真美のカウントとともに私は一気に体を振り絞る。
届くかどうかは分からない、いや届く!
「0!」
振り絞った体を一気に振り切る!その反動とともに私は笹を宙へと放つ!
「いっけえええ!!」
ものすごい勢いで笹は天へと昇っていく。
「届いたかな?」
空が暗いため一本の笹を見つけることは難しい。
「どうだろうね。でも」
落ちてくる音は聞こえない。
「届いてたらいいんだけどな。私の願い」


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