第六話「風吹けば雨が降る 後編」
俺が無口から一転して生徒会に入ることになった次の日。
この日は休日で学校は休みなのだ。
「ふわぁぁああ。よく寝た。今は何時だ?」
ベットの前にある時計を見る。どこにでもある目覚まし時計のようだ。しかし龍司は目覚ましの機能を使ってはいなかった。
「え〜と、5時か……って5時?なぜに?」
俺はあわててテレビを付ける。
「おはようございます」の言葉で始まる番組。テレビの時刻を見る。
「5時……か。ええっと、何だつまりその、俺は5時間しか寝てないのか?それとも、」
携帯を開く。見る場所はもちろん時間の欄。
「8時・・・3時間も早いだと、つまり俺が帰って来た時はまだ10時だったのか?だったら、一歩間違えれば重傷だったあんなまねをしなくてよかったというのか。あぁ〜、なんだ、一気にやる気が失せてきた。もう一回、寝ようかなっと」
……
……
…
「眠れん。しかし困ったな。これからどうしよう」
1,むりやり寝る
2,漫画を読む
3,物語を考える
4,先輩から貰ったゲームをする
よっしゃ〜、ゲームしよっと。テレビに接続してっと、後はソフトを入れて、
『ピピピッ』
携帯が鳴る。
誰だ?こんな早くに、そう思いながら出てみた。
「はいもしもし」
「お〜起きてたか。誰だか分かるよな?」
「へっ?いや〜分かりません」
「つれないな〜、俺だ俺」
「オレオレ詐欺ですか?」
「違う!大体詐欺がこんな時間に電話するかっての」
「それもそうですよね、じゃあ、誰ですか?」
「どうやら、本当に分からないようだな。まぁいいだろう。教えてやる。生徒会長だ」
「え?どうして生徒会長さんが俺の電話番号を知っているんですか!?」
「生徒会の情報網を甘く見てはならんということだよ」
「何でもありなんですね、生徒会って」
「生徒会長のこの俺だからこそだ。他の者には出来ん!」
「うっわ〜、断言しましたね。で、その生徒会長さんが俺に何のようですか?」
「ああ、そうだな。では本題に入ろうとしよう。今日8時より生徒会の活動を行う。集合場所は春桜学園の生徒会本部だ遅刻は許さんぞ」
「えっ、8時ですか!?無理です。確実に遅れます!家から学園まで3時間はかかるんで」
「え〜、そう?んじゃあ仕方ないなぁ。まっ、今日伝えたからなぁ、よしサービスだ。9時に集合だ。それでも遅れた場合は、何かいろいろ想像しておけ。後お前、月宮の番号知ってるか?」
「いえ、知りませんが」
「そうか、まっ面倒だが俺が伝えなければならんようだな。お前はさっさと家を出て学園に来い!いいな?」
「……はい、分かりました」
はぁ〜、これからゲームしようと思っていたのになぁ〜仕方ない、我慢するしかないか。
俺はしぶしぶ家を出て学園へと向かった。
学校前の坂道
「ぜぇ、ぜぇ、なんで、こんな時に限って、バスが、遅れ、るんだよ。おかげで、この道を、走らないと、いけなく、なった、じゃないか。」
現時刻8時50分
息を切らしながら坂道を登る。
後10分で着かなくちゃいけないとは。出るときは普通に余裕があったのに。急がねぇと何されるか分かったもんじゃないっ!
「失礼しますっ!」
8時59分
よかった、間に合った。
「どうした、息なんて切らして」
「集合9時まででした……よね?」
「……」
「……あれ、他の人達は?見たところいないんですけど?」
俺は部屋の周りを見渡してそう言った。
「そりゃあな。集合10時だからな」
「……へっ?でも9時集合って言いましたよね?」
「ふふっ。ドッキリだ!」
「?何がですか?」
「龍司、今朝お前が乗ったバスが遅れなかったか?」
「何でそれを!?」
「知りたいか?」
待てよ、なぜに会長は最初ドッキリと言ったのか、そして、どうしてバスが遅れたと知っているのか。理由は簡単だ!
「分かりました!生徒会の情報というやつですね?」
「近いようで違う。」
「えっ!?……すいません分かりません。答えは何ですか?教えてください!」
「お前はな、少しはでてこんのか。まぁ確かに考えたところで答えには絶対にたどり着けないとは思うがな。答えはだな……実は簡単!バスの運転手に遅れろと言ったからだ!」
「なっ、なんと〜。そんなことが、春桜の生徒会長の力……恐るべし!!」
「これがここの生徒会の力だ凄いだろ」
「参りました〜」
「それにしても時間内にお前が着くとは思ってなかったな。たっく、これから時間どう潰せっていうんだよ」
「いや、そんな逆ギレされても困るんですが」
「お前が遅れると思って皆には10時と言ったんだがな〜」
「まさか、そんな手を使って初めからそんな罰ゲームをさせようと思っていたんですか!?」
「まぁな」
「立派ないじめじゃないですか!?」
「そうだな。まぁしかしだ、お前はそんな決められていたこの惨劇を回避できたんだからいいじゃないか」
「そんな後付けみたいな言い方って……それよりも、とにかくこれからどうするんですか」
「ふぅ〜む。……仕方ない。お前芸をしろ」
「なるほどその手が……って俺すかっ」
「会長命令だ、従え」
「嫌です!」
「そうか……そんなに嫌か、ならばお前は罰を受けるという事だな」
「えっ、ちょっ、まじっすか!?」
「ほらよく言うだろ。逆らう者皆罰ってな」
「そんな〜!分かりましたよっ。芸をすればいいんでしょ!?」
「一度逆らった者には罰あるのみ!」
「嘘でしょ〜。・・・って言うかそれ単に罰ゲームがしたいだけなんじゃあ?」
「その通り!だから、なっ」
「『だからなっ、』じゃな〜い。そんな横暴、俺には聞きませんよ!」
「失礼します」
「どうぞ」
!?
あっれ〜今までここで俺と言い合ってたのにもう椅子に座ってるよ!
「おはよう、月宮さん」
「あっ、おはよう三木君」
俺がいたとは思わなかったのか月宮さんは一瞬驚いた顔をした。
「おはよう、月宮君」
「おはようございます、会長」
「まっ、皆がそろうまでソファーにでも腰をかけたまえ」
「失礼します」
そう言って月宮さんはソファーに座った。
いやそれにしても、月宮さんのおかげで助かった。
午前10時
「さて、皆そろったな。では始めるとするか、新生徒会の初の活動を」
始まった。って言うかなんで休日にやんのかな〜この活動。別に平日でも良いと思うのだけど。
「さて、先にも言ったとおり今回が一年の初の活動だ。まだ自分が何になったか分からないだろう。という事でまずは君達の役職を発表する事にする」
「役職ですか、ですが普通にクラスの代表としてではないんですか?」
「勘違いしてもらっては困る。君達二人は選ばれたんだ」
「え〜と、何にですかね?」
「だからそれを今から発表するのだ。少しは落ち着きたまえ」
「あっ、すみません」
「ではまず月宮藍君、君は書記に任命する」
「ありがとうございます。頑張らせていただきます」
「うむ、そして三木龍司、君も書記、及び会長補佐に任命する」
「え〜!どういうことですか!?会長補佐って!?」
「昨日、君も了承したではないか」
「そういう事とは思っていませんでしたよ!?」
「ふむ、だが君しかいないのでな」
「それはどういう意味ですか?私以外にも人はいるでしょ?」
ふぅ。
会長が深いため息をつく。
「この学園では男子しか生徒会長をする事が出来ない決まりになっていてな女子には出来ないんだ」
「そっ、そんな、そんな決まりがあったなんて」
「まっ、それに君なら大丈夫だ必ずできる」
「そんな、何を根拠に、」
「まっ、以上で発表は終了だ。次は、自己紹介だ。まずは三木君、君からだ」
「えっ!?わっ、分かりました。え〜と本日より書記及び会長補佐になりました、一年四組の三木龍司です。特技は、そうですね〜一度見た物なら覚える事ができる事です。これからよろしくお願いします」
「何か抱負とかないか?」
「抱負、ですか?そうですね〜。今よりも過ごしやすい環境にしたいです」
「そうか。では次、月宮君」
「はい。書記に任命されました1年4組の月宮藍です。特技は誰とでも友達になれることです。未熟ながらも頑張りますので、よろしくお願いします」
「よろしく。では次は……誰からする?」
「では、私が」
そう言って立ち上がったのは、黒髪が背中まで伸びていて、頬の髪を結んでいる。なにやら和服が似合いそうな人である。
「私は2年2組の日向巴と言います。役職は副会長をしています。これからよろしくね」
『よろしくおねがいします』
「お次はあたしだねっ」
なぜか髪が赤く見える。本当は茶髪だと思うのだが、髪は短髪。首ぐらいで綺麗に切りそろえてある。見た目では活発に見える。
「あたしは2年3組の紺野きららだよっ。巴っちと一緒の副会長さっ。仲良く楽しくしいこうねっ」
う〜む、なんとも元気はつらつな人だろうか。見た目どうりのお人だ。
「では、最後は私が締めようか」
生徒会長が立ち上がる。
「私は2年2組の光翔と言う。役職は知っての通り生徒会長だ。さて、みなも知ってのとおりこの生徒会では生徒の代表が集まる場所。そして我々はさらに代表の代表と言う立場にある。我々が決定する事は常に生徒の、そしてこの学園の責任が付きまとう。そのことを重々心に刻みこの生徒会で活動したまえ。一年間の付き合いとなるが生徒会代表として我らが結束しこの学園をより良い学園にして行こうではないか」
さて、俺はこれからどうするべきなんだろうな。上手くいきかけていた高校生活、俺の平穏、全て楽な方向に行きかけていたのに。たった一度遅刻しかけて、たった一度選択肢を間違えただけで、ここまで崩れ落ちるなんて考えてもいなかった。この後何が起きるかなんて俺には分からない。だが確実に俺の予想をはるかに超える出来事が起こるはずだ。・・・いや、今以上の事なんて起こるわけないか。……そう信じていたい。
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