第四話「Death-デス」
飛行機が不時着して2日目。
日が頭上にあるから、すでに昼を回っている頃だろう。
俺達は特に何かするわけでもなく砂浜の上に座って時を過ごしていた。
迎えが来るのを待っている…というわけではない。俺に関して言えることはただ一つ、呆然としているだけだ。勿論迎えが来ればいいとは思っている。だがそれはあくまで来ればであって、期待という名の感情は1mm程も抱いてはいない。その理由はやはり今朝に見たあの死体だろう。
死んでいたのは宮田晴男28歳、会社員。死亡理由は単純に切り裂かれによる一撃死だろう。ただし、人の手によるものなのかこの島に住む動物の手によるものなのかは判断しかねる。
とにかく、人が一人死んだ。この事実によって森の中にいた乗客たちがパニックに陥ったことは言うまでもないことだろう。
その様を俺はただ口も出せず立ち尽くしていた。
暴動が治まったのはそれから2時間経過した頃だった。落ち着いた乗客たちは一つの行動を取ることを俺は乗客の一人から聞いた。
その人はどうやら俺に提案を持ちかけてきたらしかった。
「君も一緒にあの小屋で立て篭もらないかい?外にいたら晴男君みたいに動物に襲われてしまうかもしれないからね」
その人は斉村秀紀40歳、会社員。死亡した宮田晴男の直属の上司だったらしい。
「お誘いは有難いですが、友達と相談して決めることにします。」
と言って、俺はようやくその場を離れることが出来た。21にもなって情けない話だが、俺はずっと腰が抜けた状態だったのだ。
「というわけなんだが、圭吾どうする」
俺は砂浜に戻ってすぐ、見たことから起こったことまでを圭吾に話した。近くにいる祥子にはなるべく分からないように暗号化しながら。知らないほうがいいという兄の配慮、というよりも兄のおせっかいと言ったほうがいいだろう。
「ふむ、まぁぶっちゃけると小屋には行かないほうがいいだろうな
。宮田という男は動物に殺されたいうことも考えられるが全く同じくらいの確立で人に殺されたということも考えられるからな」
「人にって、圭吾お前それって」
「無きにしも非ずだ、勝平。今この場所では全ての可能性を考慮に入れて行動しなければ生き残れない。森の中はあらゆる死角が存在する、そこで襲われでもすれば逃げることは困難になる。だがここならば死角は一切存在しない、だから逃げることは容易い。なぜかは分かるな。要は時速100`の車が急に横から現れるのと来ることが100`離れた場所から既に分かっている。という具合だな。もっとも津波を考慮に入れる必要はない。なぜならどこにいても結果は変わらないからだ。まぁ、長くはなったが小屋には行くな」
結局俺達は小屋に行くことはなく、砂浜にいることにした。
食事に関しては持ってきていたお菓子で凌いでいた。これも圭吾からの提案で3人が持ってきていたお菓子を分割して、今日はこの分と決めている。
それにしても、この生活は一体いつまで続くんだろうか。
夜空を見上げて俺はそう思った。
空では星が一つ、消えていた。
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