第10話「謎の町『獅子裁町』の存在」
日本地図からは抹消された場所。大体の位置としては京都の近くに付随する。
山もあり、海もあるため輸入やら輸出やらは一切行わない自給自足の生活を行っている。また日本に位置するため四季もある。学校は一校のみ。そんな独立したこの町獅子裁町にはいくつかの秘密がある。
代表的な秘密はこの町がなぜ地図から抹消されたのかということだろう。
そんな秘密を解明したいと立ち上がった2人の小学生がいた。
彼らの名前は足火海理と足火明葉という。2人の名字から見て分かるように2人は兄妹である。
「なぁ明葉、獅子裁町って町知ってるか?」
「ししさーちょう?ううん、知らない」
「ししさーちょうじゃなくてししさばきちょうな。」
「それがどーしたの海利ちゃん」
「うん学校帰りにさ、おっちゃんに『獅子裁町がどこにあるか知らないか?』って聞かれたから『そんな町ないですよ』って答えたんだ。そしたらおっちゃん『やはりそうか。いやすまない、今のは忘れてくれ』って言って去っていったんだ。なーんか顔が本気だったからさ、多分本当にある町なんだと思うわけなんだ俺は」
海利ちゃんがこういう風に他人からの話に興味を持って動くのは少なくない。
好奇心旺盛なところが海利ちゃんの悪いところだ。まぁ、それだけが悪いところではないのだけれども。でもこうも思ってしまう。好奇心旺盛がなくなるとそれはもう海利ちゃんではなくなると。だから多分海利ちゃんにとって好奇心旺盛という気持ちは悪いものではあるけど同時に自分を形成するためになくてはならないものなんだろう。それにそんな海利ちゃんと一緒になにかをすることは楽しいしね。
「でもどうやってその……ししさ……ししさーちょうって町を調べるの?」
駄目だ。頑張って発音しようと思うけどどうしても噛んでしまう。上手く発音するのって苦手だ。
「ししさばきちょうな。うん、そんなこと全然考えてないよ。しらみつぶしに調べまわってみるしかないよ」
海利ちゃんを表す言葉は、無計画、無鉄砲そして好奇心旺盛の3つで十分だと思う。
かくして、私たちは謎の町獅子裁町について調べだした。
まず最初に向かった場所は図書館。
古い知識を得るには本に頼ったほうがいいのではないのかと海利ちゃんの案だ。
「うーん、ししさばき、ししさばき…。全然見つからないな。明葉、そっちはあったか?」
図書館にも関わらず大声を上げる。兄であることは分かっているけど今無性に無関係を装いたくなる衝動に駆られた。
その衝動を抑えて私は海利ちゃんに駆け寄り小声で言った。
「海利ちゃん、こんなとこで大きな声出さないで」
海利ちゃんは反省してるのかいないのか、笑って言った。
「あぁ、すまんすまん」
「もう、海利ちゃんったら。…本だけど、なかったよ。係りの人に聞いてみたけど『そのような本はありませんね』だって」
「ふぅむ、収穫なしか。じゃあ、次行くぞ」
私達が次に向かったのはネットカフェだった。
これは私の案だ。調べものにはネットはこれに勝るものはなし。これは現代の当然の常識だ。
「えっと、ししさーちょうってどんな漢字なの?」
「ししさばきちょうな。漢字ねぇ、言葉でしか聞いてないからなどんな漢字かは分かんないな」
むぅ、役立たず。
などと心の中で密かに思ってみる。
「じゃあとりあえずはひらがなで検索してみるね」
初めから設定してある検索サイトからひらがなで’ししさばきちょう’と打ち検索してみる。
「海利ちゃん……どうしよっか?」
「どうする…って言われてもな」
なんと検索結果は10万件もヒットした。予想外の結果に海利は驚く。
「う〜ん、それらしいものを片っ端から調べていくしかなさそうだな。」
見てみると大多数はまるで関係がないようなものばかりだった。
例えば、最初のししにのみ反応したものや最後のちょうにのみ反応したものがあったり。さらにはししとちょうに反応したものもあったり。中には「し〜っと静かに」なんて全く関係のないものもあった。
「う〜ん、なさそうだな。やっぱ存在しないのか、そんな町」
しかし、突然次へのボタンをクリックする手が止まる。
「獅子裁町の秘密……これ…か?起きろ明葉、多分見つかったぞ」
海利ちゃんが私を揺すり起こす。どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
「見つかったって、何が?」
「…全く、獅子裁町のことだよ。まぁ、詳しいことはこれを見ろ」
そう言って海利ちゃんは画面を指差す。
「……海利ちゃん、こんな町本当にあると思う?」
「さぁ?でもあったら面白いと思うけどな」
『人外の者が住む町獅子裁町。町といえど県並みの広さで海は存在せず、周りを超高の要壁で囲まれている。この要壁は人の目には見えない仕様になっていて、誰にも気づかれずに存在している。要壁には様々な説があり、一番有力な説は軍が人外の者を閉じ込めるために作られたということだ。』
これはそのサイトに書かれていた一文だ。私から言わせてもらえば、人外の、とか目に見えない、とかまるでどっかの漫画から取ってつけたような妄想にも等しいものを信じる気なんて全くなかった。でも海利ちゃんはそうじゃなかった。
「明葉、どうやら獅子裁町はこの町の近くにあるらしいぞ。やばい、わくわくしてきた」
「ちょっと海利ちゃん、そんな町ほんとにあるわけ…」
「今日はもう時間的に無理だな。よし、明葉。来週あたり探しに出るぞ」
……むぅ。こうなった海利ちゃんには何を言っても絶対に曲げることはない。私はいやいやながらもあるわけがない町探しをすることになってしまった。
……でも本当にあったら面白いかも。
そんな気持ちも心の片隅に密かにあった。
あとがき
どうも、失踪気味になっていたピヨーリでございます。
今回の話、9話を手がけていたときから同時に書き始めていたのですが、あろうことか完成するまでにかなり長いこと時間がかかってしまいました。
記念すべき10ということで一風変わったものを書こうと思ってしまったことが何よりの失態だったのだと思います。
今回の話は獅子裁町の舞台裏を書くということが話の根幹にあります。
まぁ、1話で終わらせる気はないんですけどねwww
この後もキリがいい話数に織り交ぜていこうと考えています。予定は未定だよw
海利と明葉、バカな兄としっかりのつもりの妹そして謎のおっちゃんw
おっちゃん関係ないよ!!
いや明葉、おっちゃんがいなかったら俺たちはししさばきちょう自体を知らなかったぞ
そっか……でもほとんど出てないじゃん!
次回は獅子裁町は元に戻って香奈達の話になります。
更新日は未定!!
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