第3話「そのままに…」

「ねぇ、真美。こいつどうしよっか?」
私は変態に目を向けたまま言った。
「そんなこと、私に言われても」
どうもできないという風な口調だった。
「う〜ん、このまま放置しておこっか?」
「そう、だね」
私はあまりこんな変態と関わりたくなかったので、放置することに良心は痛まない。
「よし、じゃあ早速帰ろう」
「うん」
そして私たちは再び帰り道を歩き始めた。
「明日って、体育あったっけ?」
「えっと、たしかあったよ」
「そっか、テスト明けにいきなり体育ってどうかと思うよね」
「そうだね。でも香奈はいいじゃない、運動得意だし。私はかなり鬱だよ」
真美は運動が苦手なのだ。なんでも動きすぎると病気になるらしい。
「いっそのこと休んじゃえば良いんじゃない」
「それは駄目だよ。ちゃんと授業には出ないと」
いつまでも他愛のない話を、私たちはしていた。
変態の事はきれいさっぱり忘れて。

戻る 前へ 次へ